FX取引でレバレッジ(「テコ」の意)が高いと危険といわれることがあります。レバレッジとはテコの原理と同様に、小さな力で大きなものを持ち上げるということが連想されると思います。
FX取引におけるレバレッジ(テコの原理)とは、小さな資金で大きな取引をするということになります。日本の金融庁は、高レバレッジは危険として、日本の国内のFX会社に対し、レバレッジは25倍までという規定を設けています。
海外のFX会社の平均は500倍と日本のFX会社の約20倍で、あまりにも差があります。この高レバレッジは本当に危険なのでしょうか?
また、FXにおける取引の最小単位は「pips」と呼ばれます。円がらみ(クロス円)の通貨ペアだと、1銭(100分の1円)が1pipsです。
1pips値が動くとレバレッジ倍率分の損失又は利益が出るという勘違いがあります。
・レバレッジ倍率と損失又は利益の関係がわかる
・高レバレッジであっても、大負けしない資金管理方法がわかる
・高レバレッジ取引の活用の仕方がわかる
・「pips」と損失又は利益の関係がわかる
目次
1. FXの資金管理 レバレッジとpipsの関係とは?
結論からいいますと、大きな損失又は利益がでるのは、レバレッジ倍率によるものではなく、1トレードあたりにベットする「ロット数(通貨量)」に比例して大きくなるのであって、レバレッジ倍率に比例するのではありません。
確かに、レバレッジ倍率が大きいと、1トレードあたりにベットするロット数(通貨量)は大きくできますし、ついつい欲をかいて大きなロット数で取引しがちではあります。
しかし、高レバレッジであとうと低レバレッジであろうと、1pipsあたりの損失又は利益は、変わりませんので、レバレッジ倍率の大きさが危険と考えるのは間違いです。下表のとおり関係するのは、必要証拠金(必要資金)の大きさだけです。
このことからも分かるように、レバレッジ倍率が大きいと少ない資金でトレードできるのであって、1トレードあたりのロット数(通貨量)を制限すればむしろ安全といえるのです。
また、そもそもトレードとは確率や期待値のうえに成り立つものであり、勘を頼りに行うギャンブルとは無縁のものなのです。大きなお金をより大きくする投資ではなく、小資金を大きく育てるためのハイリスク・ハイリターン投資ですから、レバレッジは高い方が有利です。
今回は、高レバレッジで取引をする際の資金管理の考え方と具体的なやり方、ロット数(通貨量)と「pips」の関係、損失額(コスト)を固定化する方法について、解説していきます。
2. バルサラ破産確率
まず、トレードで確率といえば避けることのできない理論がバルサラ破産確率です。この理論は、数学者の「ナウザー・バルサラ」が考案した、現在実行しているトレードルールを継続した場合に、破産する確率を求めるための理論です。
破産といっても法的な破産ではなく、トレード資金が底をついてしまうことをこの理論では破産と呼んでいます。
リスクマネーを扱う際には、絶対に無視できない理論ですから実践することをおすすめします。
破産確率を求める際の重要な変数の3要素が、
・平均損益比
・資金率
です。
以下に順を追って解説します。
1)勝率
これは、どなたでも分かりと思いますが、トレード回数に対して、勝った回数を確率で表す数値です。つまり、
となります。
2)平均損益比
これは、全体のトレードで得た利益または、失った損失の平均を、対比することで比率を求めます。この比率を求めるためには、まず平均利益と平均損失を求めます。つまり、
・平均損失 = 総損失 ÷ 総トレード数
例1)平均利益を求める
1000回トレードを実施して獲得した総利益が、5,000,000円の場合、
5,000,000(円) ÷ 1,000 (回)= 5,000(円)
例2)平均損失を求める
2,500,000(円) ÷ 1,000(回)= 2,500(円)
上記、平均利益と平均損失をあてはめると、
5,000(円)÷ 2,500(円)= 2.0
となります。
これをリスクリワードとも表現しますが、コスト対効果の比率で、簡単にいうと、費用対効果の数値です。2.0の場合、費用の2.0倍の効果(利益)があるということになります。
3)資金率(損失許容額)
資金率とは、トレード用資金に対する損失割合のことを指します。
つまり、トレード1回あたりに許容できる損失額のことです。
例)トレード用資金が1,000,000円で損失許容額が20,000円の場合
20,000(円)÷ 1,000,000(円)= 2%
となります。
4)バルサラ破産確率の計算機
勝率、平均損益比、資金率が求められたところで、バルサラ破産確率の計算をします。
計算式は以下のとおりです。
0 < x < 1 → xは1以下の数になります。
Q = x^(n/b)
何だかわかりにくいですね。私もこ公式を理解するのに半年くらいかかりましたが、理解する必要はありません。重要なことは、破産する確率がないトレード方法は何かが分かれば良いのです。
そこで、上記公式がプログラムされた下記の便利な計算機がありますので、ご紹介致します。
出典:バルサラ破産確率計算機
①定率を選択する。
②自身の手法の勝率を記入する。
自動売買(EA)の場合は、バックテストデータに記載されています。
③平均損益比率を記入する。
自動売買(EA)の場合は、バックテストデータに、トレード回数、総利益、総損失が記載
されているので、以下の計算からEAのパフォーマンスを求めて計算機に記入してみましょう。
平均利益 = 総利益 ÷ 総トレード数
平均損失 = 総損失 ÷ 総トレード数
平均損益比 = 平均利益 ÷ 平均損失
④損失の許容(資金率)パーセンテージを記入する。
こちらは、2%と記入してください。理由は後述します。
⑤取引開始の資金額を記入する。
トレード用の資金として総額いくらを用意するかを記入するのであり、FX口座に入金する額を記入するのではありません。
⑥破産と判断する資金残高を記入する。(※2)
0円だと、追証(海外FX会社の場合はかからない)がかかるかもしれませんので、10分の1くらいを設定しましょう。
上記の例では、資金額が10万円、破産判定額1万円、勝率50%、平均損益比率が1.3倍、損失の許容%が4%で、破産確率は0%となりました。
お分かりと思いますが、この範囲でトレードをする場合は、破産する確率は0%ということになります。
しかし、ここでもう一つ勘案しないとならない問題があります。それは、最大連敗回数(ドローダウン)です。
手法のバックテストを10年前後の期間でとったことがある方、自動売買ツールのバックテストデータをご覧になったことがある方はお分かりと思いますが、数千回、数万回とトレードをすると、どのような優秀な手法にも連敗は必ず起きます。
連勝が必ず起きるのと同様に、連敗も起きます。都合よく連勝だけを引き、連敗を避けることは、よほどはっきりした根拠がないと不可能です。
上記の例では、仮に23連敗した場合には、破産となってしまいます。私が知る限り、バックテストをとると、連敗数は15から最大30連敗近く発生してもおかしくはありません。
そのため、損失の許容%は4%ではなく2%で留めるべきです。これがトレード1回あたりのコストになります。
まず、この実態を把握したうえで、はじめて資金管理の第一歩がクリアできたといえます。
3. 具体的な資金管理法とは
破産確率を0%に抑えるトレードコストが分かったところで、具体的な資金管理方法について解説します。
1)リスクオン口座とリスクオフ口座を分けて管理する
結論からいいますと、銀行口座はリスクオフ口座です。FX口座は、国内FX会社であろうが、海外FX会社であろうが、リスクオン口座になります。
何故なら、FXは仮に損失を2%以内で抑えようとしていても、フラッシュクラッシュという短時間(数分)に200pipsから1000pips以上という値幅で相場が動くことが1~2年に1回は発生します。前回は2019年1月にドル円、豪ドル円などでも発生しました。
フラッシュクラッシュが発生すると、例えストップロス注文を入れていても、売りに対応する誰かの買指値注文がないと何百pipsも滑ってしまい設定したストップロス価格を大きく下回って約定してしまい、大きな損失が発生します。
そして、そのトレードに使っていなかった資金まで食われてしまうのです。つまり、FX口座は危険がいっぱいなのです。
また、FX会社は大手優良会社でも倒産するリスクはつきものです。同じ金融機関とはいっても銀行のように信用創造から通貨発行権を保持している訳ではないので、FX口座に資金の全額をおくことはお勧めしません。
2)FX資金の具体的な管理方法
より安全なFX資金の管理方法は、基本的にリスクオフ口座にトレード資金の全てを入れて保管し、チャンスが訪れた際にリスクオン口座にトレードに必要な資金を移して取引するというスタンスをとることです。
しかし、海外FX会社のように入金に一定の時間や費用がかかる場合には、日常で資金を出し入れすることは煩雑になることもあります。
そこで、次のような例を踏まえて解説していきます。
例えば、トレード用に資金を20万円用意して、海外FX会社の口座で取引をするとします。
トレード1回あたりの損失額を決め、ロット数も決めていれば、レバレッジは何百倍でも、数千倍でも関係ありません。
バルサラ破産確率と最大連敗(ドローダウン)数から、損失額は2%としたので、1回あたりのトレードコストは、20万円×2%=4,000円です。
私の場合はデイトレが中心なので、海外FX会社を使うときは、トレード損失額(コスト)の5回分の2万円を入れます。そして、残りの18万円は銀行に留めておきます。面倒なようですが、これが重要です。
そして、利益がでたら、月に1度利益分を出金します。これを3カ月続けます。もし、この時点で2万円が4万円に増えたら、2万円はリスクオフ口座に出金して、先ず元をとります。
これで、銀行口座は20万円、FX口座は2万円になります。少ないようですが、3カ月で元本20万円の10%が増えましたね。
そして、FX口座の2万円で同様に3カ月トレードを行います。万一、ドローダウン(連敗)し、資金が尽きたら、2万円を銀行から入れますし、逆に2万円の利益がでたら、今度は銀行には出金せずに、FX口座4万円でトレードを行います。
これを1年間繰り返して銀行口座に20万円、例えばFX口座が8万円になったら、FX口座から5万円を銀行に出金し、今度は、1回あたりのトレード損失額(コスト)を4,000円から6,000円に増やします。
銀行口座は1年で20万円から25万円に増え、トレード資金は、FX口座に3万円残ります。
トレードコストが1.5倍の6,000円に増えるので、1年後には12万円の利益が期待でき、実現したら、今度はトレードコストを9,000円に増やします。
つまり、銀行口座は32.5万円に増え、FX口座は45,000円になります。
基本的には、これを永遠に繰り返します。
ただ、勝率や平均損益比率が下がった場合は、手法自体を見直さないとならないので、手法の見直しと共に、狙う利幅と損失コストを見直しますが、この点については別の記事でご紹介致します。
3)損失額(コスト)を固定化する方法
折角、バルサラ破産確率を知り、トレード1回あたりの損失額を決めても、そのとおりに実行できなければ意味がありません。
そのためには、トレードごとにベットするロットの大きさ(通貨量)を固定する必要があります。また、同時に損切り幅(pips)を決めることが重要です。通貨量の大きさと損切り幅の関係は下表を参考にしてください。
但し、同じFX会社でも口座ごとに1ロットが10万通貨だったり、1,000通貨だったりするので、ここでは通貨量(1万通貨=1ロット)で解説します。
1万通貨が1ロットの口座で取引する場合、USドル円だと、上表のとおり1pipsは110円です。トレードコストは4,000円と決めましたから、1万通貨で取引する場合、
4,000÷110=36.36pips
が最大のトレードコストになります。
これを2万通貨の取引にしてしまうと、トレードコストは半分の18pipsになりますが、18pipsではすぐにロスカットに引っかかる可能性が高いと下図のチャートから判断できます。
上図のチャートはポンド/円の日足チャートです。赤丸のところに注目し、これから下落するのか?又は再上昇するのかという局面ですが、ここでは下落するシナリオを想定し、売りエントリー目線でみていきます。
次に下図は、上図ポンド/円の日足チャートを4時間足チャートに変更したものです。
ロスカット幅は25pipsでみています。
その理由は、チャートの左のローソク足の上ヒゲの長さの平均が19pipsあったからです。つまり、平均以上の上ヒゲがでないとみています。
この注文をIFD(イフダン)で入れておいても良いですし、私の場合はMT4のアラートを設定し、ターゲットプライスに近づいてきたらアラートが鳴って、そのときの相場の状況をみてエントリーするようにしています。
このように先ず、ロスカットポイントを決め、逆算してエントリーポイントを決めることで、トレードコストが一定になり、狙える利幅も合理的なものになります。
またエントリーポイントは、ブルーの網掛けをしているとおり、同様の値幅で上昇しその後下落するとみています。
狙う利幅は0.5ロット(5,000通貨)が50pips、0.25ロット(2,500通貨)が90pips、残り0.25ロット(2,500通貨)が400pipsですから、平均損益比率の2倍以上の損益比率です。
また、この分割決済により、勝率は確実にあげられます。
他にも複数の根拠はありますが、このように、複数の根拠を持つ理由は、過去10年間のバックテストデータから、上記シナリオになった場合の勝率が60%以上ある(バルサラ破産確率でシミュレーションした勝率50%を超えている)とみてとれるからです。
FXの資金管理とは?まとめ
繰り返しになりますが、FX取引で最も重要なのは資金管理です。一言で資金管理といってもその要素は一つではありません。
できるだけ多くの取引回数をこなすことで本来の勝率に近づけること、できるだけ多くの取引回数をこなすため、破産確率を下げる方法、具体的な資金管理の考え方と実例などを解説しました。
これらは全て確率の上に成り立った実態であり、過去に起きた事実です。
事実に基づき、大事な資金を失わないよう、最善の策を講じて実行することをおすすめ致します。